はじめに
人類のみなさん、こんばんは。
むじゅんです。
このブログは、むじゅんの情報の母艦を目指しているので、
以前noteに投稿したこちらの記事を、ブログ用に再投稿します。
むじゅんは、世界中の女神さまについてお勉強することが大好きです。
世界の色々な民族の間で語られてきた神話や神様たちの姿を学ぶことは、
その民族の人たちがどのように世界を捉えようとしていたかということを知るのに役立ちます。
多神教の神様というものは、人々が、この世のことをなるべくわかりやすく理解するために、
擬人化したものだったりするのです。
わたしは、世界中の人たちが、神話というものを通して、どのようにこの世界に意味をつけていったかに興味があります。
そして、とりわけ、わたしは女性的なエネルギーに魅せられる者。
個性に溢れた女神さまの世界に、気づいたらどっぷりだったのです。
各地の神話には、優しい女神さまも、悪しき女神さまも、美しい女神さまも、醜い女神さまもいます。
はたまた人間に似た姿ではない女神さままで色んな女神さまがいます。
その全てが愛おしいのです。
そこで、わたしの愛書『世界女神大事典』をもとに、わたしが調べた女神さまたちの情報をまとめてみます。
わたしは専門家ではありませんし、資金的に集められる資料も少ないです。
なので、できるだけ誠実に調べて発信しますが、まとめた情報は正確さに欠けることもあると思います。
わたしは女神さまを愛し、勉強している一般人の中の一人です。
ぜひみなさんも、わたしの記事をきっかけに、一緒にお勉強してみましょう。
女神を愛するだけの一般人のわたしですが、魅力的な女神さまたちの世界の入り口役になれれば、嬉しく思います。
それでは、日本神話から、アカルヒメのお勉強のはじまりはじまり〜!
※筆者の独自解釈によって、各時代・地域のリアルを無視したイラストが登場しますので、苦手な方はご注意くださいね。
1.アカルヒメってどんな女神?
プロフィール
名前 | 阿加流比売神 |
別名 | アカルヒメ、赤留比売 |
属性 | 太陽の女神 |
神話 | 日本神話 |
キーワード | 太陽、玉、感生(感精) |
アカルヒメは、新羅(古代の朝鮮半島南東部にあった国。前57-935年)から日本にやって来た、太陽の女神です。
名前の「アカル」は漢字にすると「赤る・明る」で、「赤らむ、明るくなる」という意味。
つまり、「アカルヒメ」は「赤く色づく女神」という意味になります。
2.アカルヒメの神話(『古事記』より)
むかーしむかし。
新羅の国の阿具奴摩という沼のほとりで、身分の低い1人の女が昼寝をしていた。
すると、虹のような日の光が彼女の陰部を射し、
彼女は身籠もって赤い玉を生んだ。
その様子をある男が見ていた。
男はどうしても赤い玉が欲しくなって、
女に乞い願い、赤い玉を貰い受けた。
男は赤い玉を肌身離さず持ち歩いた。
*
ある日、男が牛に荷物を乗せて歩いていると、
天之日矛という男と出会った。
天之日矛は、男が牛を殺して食べようとしているのだと勝手に勘違いし、
男を牢獄に入れようとした。
なんと、天之日矛は新羅国の王子だったのである。
男がいくら釈明しても、天之日矛は許してくれなかったので、
男は泣く泣く大切な赤い玉を差し出し、ようやく許してもらうことができた。
*
そんな天之日矛が、持ち帰った赤い玉を床の辺に置くと…
なんと、玉が美しい乙女に変化したではないか。
天之日矛は喜んで乙女を正妻にし、
彼女はいつも美味しい食べ物を天之日矛に与えてくれた。
*
しかし、2人の生活も長くは続かない。
天之日矛は思い上がり、尽くしてくれる妻を罵ったのだ。
彼女は
「私はあなたの妻になるべき女ではないのです。祖先の国に行きます。」
と言い、小船に乗って日本に逃げ渡り、難波に留まった。
これが難波の比売碁曾社に鎮座するアカルヒメである。
3.アカルヒメの伝承からわかること
アカルヒメのお話ですが、先ほどご紹介した『古事記』以外にも、
とてもよく似たお話が描かれています。
『日本書紀』
意富加羅国の王子が、白い玉が変化した美女を追って日本に入った。
美女は難波に至って、比売語曾社の神、また豊国の比売語曾社(大分県東国東郡姫島)の神となったという。
『摂津国風土記』
新羅の女神が夫から逃げて、筑紫国の伊波比の比売島、次いで摂津国の比売島に来た。
朝鮮の史書『三国遺事』
新羅の東海の浜から、まず夫の延烏郎が海を渡って日本に流れ着き、それを追って妻の細烏女も日本に流れてきた(2人は日月の精)。
いずれも、朝鮮半島から日本へ女神などがやって来ています。
アカルヒメの渡来してきたコースは、大陸と海上交通の要所であり、
文化面でも重要な役割を果たしました。
それが、アカルヒメのお話や、類話を生んだ一つの要因なのかもしれないですね。
*
アカルヒメの出生は、日光感精卵生型の流れを汲んでいると言われています。
アカルヒメの母親は、日光の光によって太陽神の子を身籠もり、アカルヒメは赤い玉からその姿を現しました。
日光感精卵生型は大陸の神話に多く見られ、卵生型の神話は南方系の神話に多く見られます。
つまり、日光感精卵生型は、この2つの型のハイブリットと言えるのです。
アカルヒメが鎮座したとされる「難波」という地名は、
古代朝鮮語で太陽を意味する「ナル」と「ニハ(庭)」で「太陽の聖地」を意味しているという説があります。
太陽神の子であり、太陽の女神であるアカルヒメが難波に至ったことには、ちゃんと意味があるのかもしれませんね。
4.アカルヒメを祀っている神社
『古事記』では、アカルヒメが難波の比売碁曾社に鎮座するとしていますが、
『延喜式』では比売許曾社について「亦下照比売と号す」としています。
実際に、現在の比売許曾神社でもご祭神が下照比売命とされており、記述が食い違っていますね。
しかし、同じく『延喜式』に、下照比売社について
「或いは比売許曾神社と号す」とあり、
アカルヒメとシタデルヒメ(下界に赤く照り輝く女神)を同一の神と見なしています(古川,2015:47-48)。
以下、実際にアカルヒメに関係している神社です。
比売許曾神社(厳密には下照比売命がご祭神)
大阪府大阪市東成。
下照比売命が主祭神で、速素盞嗚命・味耜高彦根命・大小橋命・大鷦鷯命・橘豊日命を配祀している。
江戸時代の天明年間までは、牛頭天王を主祭神とする牛頭天王社だった。
赤留比売命神社
大阪府大阪市平野区平野東。
俗称は「三十歩神社」。
そう呼ぶのは、応永年間(1394〜1428)干ばつの時法華経三十部を読誦したところ霊験あらたかであったので、三十部神社が訛ったからとか、祭神が「三十町歩」の土地を「三十歩」と聞き違えたからだという。
聞き違いの伝承により、耳の神としても親しまれている。
姫嶋神社
大阪府大阪市西淀川区姫島。
姫島の地で再出発したアカルヒメにあやかった「やりなおし祈祷」を行っている。
通称「やりなおし神社」。
比売語曾社
大分県東国東郡姫島村両瀬。
『日本書紀』の「白い石から生まれた姫」比売語曽神を祀る。
姫社神社
岡山県総社市福谷。
アカルヒメが日本に逃れてきたのを天之日矛が追いかけに来た際、その家来が日本に製鉄の技術をもたらしたとして、
アカルヒメが「比買碁曾神」という製鉄の神として祀られている。
などです。
他にもあるかもしれません。
アカルヒメに関係する神社を調べてみて、それぞれに個性があってとてもおもしろかったです。
赤留比売命神社の俗説では、アカルヒメが聞き違いをするというなんとも人間臭い姿が見えてきますし、
姫嶋神社の「やりなおし祈祷」も寛容な雰囲気で素敵。
個人的にすごく興味深かったのは、姫社神社でアカルヒメが製鉄の神として祀られているということです。
これは現在の岡山あたりの人々と、朝鮮半島からやって来た人々の交流があったことの証拠だと思うし、それを神話と関連させているところに昔の人のセンスを感じます。
何より、アカルヒメと天之日矛の離縁の後日談という感じでおもしろい!
おわりに
今回は日本神話から、アカルヒメという女神についてお勉強していきました。
あかるひめの神話を見ていくと、あかるひめはかわいらしいだけでなく、行動力もある女神さまだなぁと感じます。
天之日矛に暴言を吐かれた時、
「実家に帰らせていただきます!」的なノリで、海を渡って日本にやって来ちゃうんですものね。
当時は今と違って海を渡るのは大変だったでしょうね。
でも、神様補正で海を渡るのは簡単だったのかな…
昔の人は、自分達と同じように、神様も海を渡るのが大変だと設定したのか、神様なら超人的な力でささっと海を渡ることができると考えたのか。
想像してしまいます。
いや、それにしても天之日矛はひでぇ奴です。
美味しいご飯を作ってくれて、優しく接してくれるあかるひめに、思い上がって暴言を吐くのです。
そりゃ離縁して正解ですよね。
しかも、「アカルヒメ実家に帰ります事件」の前には、牛で荷物を運んでいただけの一般男性に
「牛を食べるつもりだろ!」と誤解して勝手に突っかかって、
男性が大切にしていた赤い玉(あかるひめ)をぶんどっていますからね。
ジャイアン?いや、それ以上にひどいかもね。
何にせよ、勉強して、あかるひめという素敵な女神さまを知ることができました。
最後まで読んでくださってありがとうございました!
それでは、おやすみなさい。
参考文献・WEB
姫嶋神社,「やりなおし祈祷について」,https://himejimajinja.wixsite.com/himejimajinja
國學院大學古事記学センター,2017,「阿加流比売神」,http://kojiki.kokugakuin.ac.jp/shinmei/akaruhimenokami/
國學院大學古事記学センター,2017,「比売許曽神社」,http://kojiki.kokugakuin.ac.jp/jinjya/himekosojinja/
松村一男,森雅子,沖田瑞穂,2015,『世界女神事典』「日本の女神」古川のり子,原書房
大分県観光情報公式サイト,「比売語曽社(ひめこそしゃ)」,https://www.visit-oita.jp/spots/detail/4818
大阪市,2019,「26.赤留比売命(あかるひめのみこと)神社」, https://www.city.osaka.lg.jp/kensetsu/page/0000009222.html
たびおか-旅岡山・吉備の国,2018,「姫社神社」,https://tabioka.com/himekoso-shrine/
Wikipedia,2020,「阿加流比売神」,https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%98%BF%E5%8A%A0%E6%B5%81%E6%AF%94%E5%A3%B2%E7%A5%9E
Wikipedia,2020,「新羅」,https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%B0%E7%BE%85
Wikipedia,2020,「比売許曽神社」,https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AF%94%E5%A3%B2%E8%A8%B1%E6%9B%BD%E7%A5%9E%E7%A4%BE
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