「昇天装置」
わたしが初めて作った曲。
わたしの、わたしによる、わたしのための、初めてのうただった。
今まで、誰かの音楽を借りてくるか、その時だけで消えてしまう音楽しかやってこなかったわたし。
曲なんか作れるわけないと思っていた。
でも、なぜか取り組んだ。
体が自然に動くように。
「昇天装置」
一つの造語から、歌が始まった。
わたしは自由だった。
興奮した。
何を描いても自由なのだと。
この音楽においては、わたしが、正解であって、わたしが決めることができる。
わたしのメロディーは、わたしが生み出すものではない。
何か大きなものから、わたしが受け取らせていただいているものである。
そっと目を閉じると、今まで取り組んでいきた即興演奏とはまた違う、“歌”を授かった。
口ずさむ、わたしの歌。
その衝動を忘れたくない。
だから、曲作りなんか初めてだったけど、ほとんど1日で曲を作り上げた。
歌には、旋律だけではなく、詞がある。
自分に書けるとは思っていなかったけれど、いざ授かった旋律を前にすると、書けるものだ。
わたしは自分の歌を作ることができるこの感覚に震えた。
大学に行っても追究できなかった死生観。
深夜2時半、孤独な時間に見つけた、点滅信号が消える瞬間。
特別な装置によって、擬似的に昇天するわたしの魂。
移ろっていく夜明けの空の美しさ。
自分の歌には、世界にとってはガラクタ、けれども自分の中ではつるりと輝く宝石を、
惜しげもなく込められる。
天の国への案内人がいたっていいし、世界にバイバイしたっていい。
自分の歌を作ること、そして奏でること。
世界の大発明だ。
わたしの魂は、この歌を歌うたびに昇天し、たち消えてゆく。
今はまだ叶わぬ、淡い夢。
わたしの、わたしのための、夢だ。
歌詞
昇天装置
作詞:むじゅん 作曲:むじゅん
真夜中2時半
外に 黄色い点滅信号
ふいに消えた 闇に消えた
知らない あなたはだれ?
言わない 涙零れた
これは夢か幻か
途端光消えた
わたしの顔がエレベータの窓に白く浮かんでいる
気づけばそこは虚の中
わたしは天に召されてく
嗚呼、わたし見ていた 夢を
「消えたい」
ふいに声が溢れた
闇に消えた
知らないあの人が
行きたい場所尋ねた
わたし どこへいくのか
扉 つーっと閉じた
どうしてここにきたのかなんて知らずともいい
ただここにいるのは確か
空ろな瞳 わたしの証
存在証明はできてる
だってわたしはわたし
鈍い痛みを抱えてる
桜の花が移ろっていく
わたしは天に召されてく
既に街は遥か下に消えて霞のよう
どうして どうして 涙溢れた
どうして 今更──。
わたしを白い光が包んだ
「さよなら、セカイ。」
わたしの顔がエレベータの窓に白く浮かんでる
空の色が映ろう中
わたしも空に溶けていく
どうしてここに来たのかなんて知っているけれどもういいの
わたしは闇と光に溶けて拡がっていく
召されてく
着いたんだ
さらば、昇天装置。
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