2022年5月10日(火)
珍しく、朝早くに目が覚めた。
5時過ぎ。
もう少しずつ光が世界に溶け出しているから、闇は柔らかなブルーを帯びている。
起きてすぐのわたしは、世界を視認しようと窓辺に寄る。
すると、なんとも美しく、花瓶の花たちが佇んでいるのを目撃する。
おばあちゃんからもらった芍薬、菖蒲。
昼間華々しかったそれらの花は、今、薄闇のベールを纏っているから、まるで伏し目がちな乙女だった。
その瞳は、憂いを帯びているから伏せっているのか、まだ微睡の中にいたいから閉じかけているのかわからない。
花たちの様子のように、わたしも力が抜けてため息をつく。
上等の縮緬の布のような菖蒲の花。
明け方のブルーの空気にその色は怪しさを増して、まるでこの空気をその身に集めて具現化したようだ。
芍薬の花たち。
どうしてこんなに憂いげなんだろう。
そんなことはないのに、空気から清らかな雫を花びらに集めているように錯覚してしまう。
それほどに儚く、繊細な感情を感じさせる。
でも、この時間は、まさしく微睡がすぐに終わってしまうように、短い。
ベールみたいな薄闇は、太陽の力強い光に当てられて、嘘みたいに消え去ってしまう。
どんどん明るくなって、あっという間に一日を始めなければならなくなる。
わたしは、明け方の、忙しい世界が一瞬だけ動きを止めて滞留しているかのような、特別な時間が好きなのに。
そういう時間に限って、儚いのだ。
今年はまだ5月だというのに暑い。
わたしは暑がりだから、どんどん気温が上がっていくこの季節は不安になってしまう。
だから、とっておきを用意して、不安を少しだけ軽くする。
薔薇蜜のソーダ。
冷たいソーダや果物が美味しいのだけは、悔しいかな夏のいいところだ。
秘蔵のMONINのシロップを、とぷとぷとグラスに注いで、炭酸水で満たし、そうっと氷を持ち上げる。
ローズクォーツみたいな、美しく清涼な飲み物の完成だ!
明け方の美しい闇が終わってしまうのも、季節が過ぎ去るのも、どうしてこんなにあっという間なのだろう。
薔薇蜜のソーダもあっという間に飲み終わってしまった。
儚いね。
この世界は、儚い。
むじゅん
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