【2024年01月06日】ずっと、ずっと、探していた。

むじゅんについて

わたしには、ずっと知りたいことがあった。

小学校1年生と2年生のときに通っていた小学校の図書室で、大好きで何回も繰り返し読んだ絵本がなんだったか。

主人公の子がやまねのような生き物であること。

美しい草木や木の実の描写。

お店に行って素敵なステンドグラスを見つけて欲しくなるものの、「目玉が飛び出る」ほど高価で買えず、頑張って干した木の実を売るなどしてお金を用意して再び買いに行ったものの、他の誰かが先に買ってしまっていたというストーリー。

これまでも、「あの絵本はなんという絵本だったかしら」と思うことはあったけど、ある日、その思いが急激に高まった。

知りたかった。

あの絵本は、わたしの感性の根っことなる部分を形成してくれたという確信があった。

それを再び見てみたかったし、理屈では説明できないレベルの愛着を、小学生だった当時から、その絵本に抱いていたことを思い出した。

この絵本がなんだったかを知り、再び読むことが、わたしにとって必要だった。

今のわたしにはインターネット環境があり、高校生になってスマホを持つまでほとんどインターネットに触れてこられなかった子ども時代のわたしと違って、自分から検索することができた。

しかし、驚いた。

想像以上に見つからなかったのだ。

本を探すということにおいて、タイトルと著者名、出版社や出版された年がひとつもわからないということは、致命的だった。

国会図書館のサイトも駆使しながら、「やまね 絵本」などのワードを入力して、ひたすら検索する。

けれど、探せど探せど見つからない。

やまねが出てくる絵本は他にもあるようで、くまさんとやまねくんが出てくる絵本を中心として何件かヒットしたが、目的の絵本は一向に出てこなかった。

諦めかけたその時、Yahoo!知恵袋を覗いてみる事にした。

限りなくダメ元で。

何個か質問を見ていくうち、明らかにわたしと同じ絵本を探している質問に出会った!

期待してアンサーを見てみると、「国会図書館のレファレンスサービスを使ってみてはどうだろうか」という内容だった。

答えに接近していただけに、がっかりした。

でも、同じ本を探している人がいるということがわかっただけでも心強かった。

わたしは、同じ絵本を探している質問を、探し続けた。

そして、ついに見つかったのだ。

同じ絵本を探している質問と、その質問へのアンサーが。

その絵本の名前が。

わたしが探していたのは、二木真希子『小さなピスケのはじめてのともだち』。

うれしかった。

体が震えて、涙が出そうになった。

思っていたより昔の本で、わたしが生まれるよりも前に刊行された絵本であり、絶版になっていたそうだが、著者の二木真希子さんが亡くなってから、彼女を偲んで復刊されていた。

当時のわたしは全然知らなかったが、二木さんはジブリで原画などを担当されている方だった。

わたしも大好きで読んでいた、上橋菜穂子『精霊の守り人』シリーズの表紙絵も担当なさっていた。

一応、と思って地元の図書館で検索を掛けたら、『小さなピスケのはじめてのたび』という、シリーズのうちの一冊が、閉架書庫に収蔵されていた。

わたしは

はやる足で図書館へと向かった。

図書館のカウンターで、この本を取り出して欲しい旨を、職員さんに伝える。

ついでに、皆川博子の『薔薇密室』も一緒に(すごい面子 笑)。

検索データが出て、「少々お待ちください」と言われたので、カウンターの前で時間を潰す。

どうやら、『薔薇密室』の方は早々に見つかったようだ。

が、肝心のピスケの方が見つからない様子だった。

最初は、対応してくださった職員さんが別の職員さんに相談するといった感じだったが、本当に見つからないらしく、にわかに職員さん全員がバタバタし始めて、入れ替わり立ち替わり本を捜索しているようだった。

「小学校に貸し出す用の棚に入ってないよね?」

「廃棄用のところにない?」

などの声が聞こえてくる。

30分を過ぎたが、まだ本は見つからない。

わたしは、「もういいですよ」と言おうかどうかすごく悩んでいた。

でも、諦めきれない自分がいるのも確かだった。

それに、どっちにしろ、図書館側も本が行方不明というのは困るだろうし…と思って、言い訳するように自分の心を曲げられないでいた。

もう見つからないかもな…と思いながら、閉館時間も気になったので、上の階に他の読みたい本を探しに行ったその時。

最初に対応してくださった職員さんが、駆け寄ってきて、「ありました!」と言ってくれた。

お願いしてから、1時間が経過していた。

わたしは99%諦めていたので、本当に驚いたと同時に、なんとしてでも探し出してくださった職員の皆さんの努力と図書館員としての意地に、心から感謝し、それを表した。

聞いたところによると、著者の姓「二木」は「ふたき」と読むのだが、その読みのデータが「ニキ」という誤った読みのデータと併存しており、そのせいで探してもうまく見つからなかったらしい。

こういうデータ間違いって、探し物の最中、しかも見つからない時って焦って気付けないものだから、冷静に気付けた人すごいなと感心してしまった。

もちろん、誤データはダメだけど。

わたしは、インターネットで質問した人、答えてくれた人、図書館の職員さんたちのおかげで、時空を超えてあの本を手にできた。

ぱらっとめくってみて気づいたけど、この『ピスケとはじめてのたび』も読んだ覚えがある。

心を育ててくれた大切な絵本を前にすると、ぶるっと鳥肌が立つような、不思議な感動がある。

懐かしくて、大切で、愛しい。

本当に、また読めてよかった。

むじゅん

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