大晦日近くに親戚の集まりがあったとき、母の従姉妹にあたる人からとあるノートをもらった。
ネパールの、ハンドメイドの紙から作られたノート。
龍の髭の実のような深い青色に、ビビットな色彩の象さんが映えている。
中の紙は木綿豆腐のような質感と色をしていて、裏側に植物の繊維がたくさん見える。
わたしが2022年の年の瀬に、遠い親戚のおばあちゃんの最後の住まいのお片付けを手伝ったときのお礼の意味を込めてくれたらしい。
「むじゅんちゃん、文房具好きって聞いてたから」
と、さらっと温かく言ってくれた。
わたしは感激してしまった。
このノートには、それはたくさんの心遣いが込められていたわけで。
わたしが最後の住まいの片付けをお手伝いしたおばあちゃんは、片付けをした日から程なくして亡くなられたのだけれど、そのおばあちゃんのことを、このノートをきっかけに話して、みんなで思い返せたのもよかった。
そして、わたしは、その亡くなったおばあちゃんから、俳句に関する本や歳時記など、3冊の本と、大量の便箋などを受け継いでいる。
亡くなったおばあちゃんはすごく筆まめで知的な人だったらしいのだけれど、本を受け継がせてもらったことで、少しでもその知を受け継がせてもらえたがした。
その本たちは、今でもわたしの部屋の本棚に並んでいる。
ノートをくれた親戚の人は、アジアを中心とした世界中に行って、現地の人々のためにたくさん動いてきた人だ。
今はネパールで、14年前はラオス。
小学校でいじめに遭い、本当に苦しい状況にあって、酷い人間不信に陥っていたわたしは、この人がラオスにいるのをきっかけに、ラオスを訪れることとなった。
見たこともない景色、人々のひたすら今を生きる営み、どこまでもシンプルな人々とのやりとりに、わたしの心はほぐされて、変わっていった。
今、世界では数えきれないほど悲惨なことが起きていて、日本も、何も信じられないようなことがたくさん起きているけれど、この親戚の人が、わたしにネパールの手漉きの紙のノートをくれたように、わたしが亡くなった親戚のおばあちゃんから本を受け継いだように、武器を持たずにいようとすることは、きっとできるから。
このノートを見るたびに、そう思う。
むじゅん
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